ランナー | 郵便学者・内藤陽介のブログ

 ランナー

 師走という言葉は、普段、泰然と構えている教師のような人たちまで走り出すほど忙しいことに由来していると、子供の頃に聞いたことがあります。


 僕は、本業の文筆活動のかたわら、週に何コマか都内の大学でパートタイム講師を担当していますので、いちおうは教師の端くれということになるのでしょうが、毎日、生活に追われて目一杯走っているような気がしてなりません。これから年内残りの日々、今まで以上に走らされることになるのかと思うと、それだけで気管支がヒューヒューと音を立てそうです。


 さて、走るといえば、走っている姿を描いた切手や絵葉書というのは数多くありますが、そんな中から、今日はこの1枚を取り上げて見ます。


 ギリシャの絵葉書


 これは、1964年の東京オリンピックの聖火リレーがスタートしたのにあわせて、ギリシャで作られた絵葉書です。貼られている切手は、聖火を採取する場所、オリンピアを描いた1.5ドラクマの通常切手で、聖火リレースタートの記念印が押されています。


 葉書には、日本人らしきランナーと日本を意識したと思しき風景が描かれていますが、なんとなく珍妙な雰囲気です。また、葉書の下に書かれている「第十八回オリンピック東京 一九六四年」の文字も金釘流で、こういっては失礼かもしれませんが、日本人が多数訪れる外国の観光地で売られているいかがわしいお土産のにおいがプンプンします。


 東京オリンピックに際しては、少なからぬ国々が記念切手を発行しています。ただし、そうした切手の多くは、“日本”よりも“オリンピック”を強調したデザインとなっています。やはり、商品としての記念切手ということを考えた場合、この時点では、“日本”よりも“オリンピック”のほうがはるかに商売になると考えられていたのでしょう。当時の国際社会の認識では、東京オリンピックは“たまたま日本という国で開かれた大会”というイメージが強かったのかもしれません。


 この辺のことについては、以前、外国切手に描かれた日本 』という本にまとめて書いて見ましたので、ご興味のある方は、是非、ご一読いただけると幸いです。