土侯国からUAEへ | 郵便学者・内藤陽介のブログ

 土侯国からUAEへ

 今日(12月2日)は、アラブ首長国連邦(UAE)の建国記念日です。というわけで、こんな葉書をご紹介します。


 ドバイ移行期


 この葉書は、連邦発足から間もない1972年5月にドバイから差し出されたものです。


 UAEは、その名の通り、ドバイ、アブダビなど、ペルシャ湾岸の群小首長国からなる連邦国家で、1971年12月に連邦が成立する以前は、それぞれの首長国はイギリスの保護下に置かれていました。これらの首長国は、イギリスと休戦協定を結んでいたため、英語ではTrucial States(=休戦協定諸国)と呼ばれているのですが、日本では、“アラブ土侯国”との呼び名のほうが通りが良いかもしれません。


 さて、各土侯国の郵政はUAEの発足により連邦郵政に統合され、土侯国ごとに新規に切手を発行することも禁じられました。そして、それに伴い、旧アブダビ切手に“UAE”の文字を加刷した切手が発行されています。


 とはいえ、連邦郵政の発足後も、しばらくの間は、移行期間として旧土侯国時代の切手も有効でした。今回、ご紹介しているドバイの葉書も、そうした移行期間内のドバイ切手の使用例ということになります。ちなみに、UAEとしての万国郵便連合への加盟は1973年1月1日のことで、これをもって旧土侯国郵政は完全に消滅しました。


 “アラブ土侯国”というと、ある年代以上の切手収集家の方なら、外貨目当てに自国とは何の関係もない切手を濫造・濫発した国々というイメージが強いと思いますが、彼らの発行した切手は、当然のことながら、彼らの支配地域では郵便に使うことができました。この辺の事情は、かつて『中東の誕生 』という本の中で簡単にまとめたことがあるのですが、真面目に取り組んでみるとなかなか歯ごたえがあって面白いテーマなので、その後もポツポツとマテリアルを買ったり、いろいろ調べたりして密かに展覧会に出品できる作品作りをめざしています。


 そういえば、来年は、UAEの建国35周年ということで、アジア国際切手展がドバイで開催されるとか。せっかくなら、なんらかのかたちでこの地域に関連したコレクションを出品して現地にも行きたいところですが、となると、その前に出品資格を取らねばなりません。といっても、4月の全日展に出品しても、おそらく、出品申し込みの〆切には間に合わないでしょう。さてさて、どうしたものか…。