(戦時下のクリスマス)バルカン・1917年 | 郵便学者・内藤陽介のブログ

 (戦時下のクリスマス)バルカン・1917年

 第一次大戦の発端となったサライェボ事件は、オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子夫妻が、セルビア人青年に暗殺されたものでした。このため、大戦の勃発間もない1914年8月~12月、オーストリアはセルビアへの侵攻作戦を行います。


 これに対して、セルビアは抵抗し、オーストリア軍を撃退しますが、最終的に、ドイツ、オーストリア、ブルガリアの同盟軍に降伏。以後、セルビア兵はアルバニアとギリシアで抵抗を続け、英仏軍がそれを支援するという構図ができあがります。


 こうした状況の下で、1917年のクリスマスにイギリス兵が差し出した葉書が↓の1枚です。


 バルカン


 詳しいことが調べきれなかったのですが、結構、よく見かける葉書なので、そこそこポピュラーな葉書なのではないかと思われます。兵士がまたがっているのは、馬ではなくロバでしょうか。「バルカンからハッピー・クリスマス」の挨拶文も印刷されています。全体にヨーロッパの田舎を思わせるのどかなデザインですが、その背後では激戦が繰り広げられていたものと思われます。


 1914年の夏に第一次大戦が始まった当初、多くの人々は、その年のクリスマスまでには戦争は終わるものと楽観的に考えていました。しかし、実際には、戦争は1915年にはいると激しさを増し、結局、1918年まで延々4年も続いてしまいます。で、この葉書が差し出された1917年は、大戦中最後のクリスマスカードということになるのですが、差出人の兵士は、無事、翌年のクリスマスを故郷で過ごすことができたのでしょうか。ちょっと、気になるところです。