敗戦国ハンガリー | 郵便学者・内藤陽介のブログ

 敗戦国ハンガリー

 第二次世界大戦の敗戦国というと、日独伊の三国を思い浮かべる人が多いと思いますが、実は、“敗戦国”はそれだけではありません。1940年11月20日に日独伊三国軍事同盟に加わったハンガリーも“敗戦国”の一つとに数えられています。


 第一次大戦以前、現在のハンガリー地域はオーストリア・ハンガリー二重帝国の領域に含まれていましたが、オーストリア敗戦の結果、帝国はオーストリアとハンガリーに分割されたうえ、領土は大幅に縮小されました。このため、失地回復の機会を狙っていたハンガリーは、1939年に第二次大戦が始まると、快進撃を続けるドイツに期待を寄せ、ドイツと組むことで第一次大戦によって失われた失地の回復を目指したのです。


 しかし、戦争の結果、ハンガリーは敗戦国となり、その領土はソ連軍によって占領れ、次第に共産化されていきます。この間、ハイパーインフレが発生したこともあって、郵便史的にはいろいろと興味深いマテリアルが多数残されることになりました。


 その一例として、こんな葉書を引っ張り出してみました。


 ハンガリー混貼


 この葉書は、第二次大戦の終結後間もない1945年7月に使用されたものです。貼られている切手は、ソ連の占領下で加刷されたものですが、葉書は枢軸時代の1944年に発行されたものです。ソ連の占領が始まって間もない時期であったため、移行期間として枢軸時代の葉書の使用が認められていた時期のものなのでしょうが、おかげで、二つの時期の切手・葉書が混ざって貼られている、風変わりな葉書が出来上がったというわけです。


 その後、ハンガリーの郵便はハイパー・インフレの影響で料金が日々刻々と値上げされていくのですが、その間の郵便事情は、たとえば、j_deafさんのHP でご覧いただくことができます。


 とはいえ、同じように、ハイパー・インフレに覆われていた1920年代初頭のドイツに比べると、やはり、日本人でこの分野にチャレンジしておられる方は相当少ないようで、なかなか、<JAPEX>などの競争展示ではお目にかかる機会がありません。


 まぁ、僕自身はやりかけの仕事で手一杯なので、とてもハンガリーにまで手が回らないというのが正直なところなのですが、それでも、この時期のハンガリーで発行された世界最高額面の切手が実際に郵便に使われたサンプルなんてのは、ぜひとも、話の種に手に入れたいものだと前々から思っているのですが…。