恐慌のない世界 | 郵便学者・内藤陽介のブログ

 恐慌のない世界

 今日(11月7日:ロシア暦10月25日)は1917年にロシアで10月革命が起こって、社会主義政権が誕生した日です。


 というわけで、戦前のソ連(1922年成立)で、資本主義に対する社会主義の優越を示す意図を持って作られた絵葉書をご紹介してみましょう。


 世界恐慌


 この絵葉書は、大恐慌の起こった1929年と1931年を比較して、主要各国の鉄鋼生産量がどれほど落ち込んでいるのか、グラフで示したものです。フランス・イギリス・ドイツ・アメリカと並んで、ポーランドが取り上げられているところが、我々日本人の感覚ではちょっと違和感があるかもしれません。


 当時、ソ連は第1次5ヶ年計画が順調に進んでいたこともあって、恐慌が周期的に発生する資本主義社会に対して、“恐慌のない社会主義”の優越性を盛んにアピールしていました。この葉書も、その一環として作られたものです。


 1930年代にドイツのヒトラー政権が直接的な脅威になるまで、ソ連(前身のボルシェビキ政権時代を含む)は、資本主義に対する社会主義の優越を示すためにさまざまなプロパガンダ絵葉書を作っていました。その際、“資本主義世界のチャンピオン”であるアメリカは、資本主義の矛盾が凝縮された存在として、揶揄的に取り上げられることがしばしばでした。


 今回の絵葉書でも、アメリカの落ち込みが一番大きいことが示されており、資本主義が発達すればするほど、その反動も大きいのだ、という彼らの主張が表現されています。


 さて、10日まで東京・白金の明治学院大学 キャンパス内のインブリー館にて開催中の「反米の世界史:切手が語るアメリカ拡大の歴史」展(10:00~16:30 入場無料 詳細はトップのポスター画像をクリックしてください)では、今日ご紹介した絵葉書をはじめ、今年6月に上梓した拙著『反米の世界史 』で使った図版の実物を中心に展示しています。ぜひ、遊びに来ていただけると幸いです。