焼け石に水 | 郵便学者・内藤陽介のブログ

 焼け石に水

 昨日は文化の日の祝日であったことに加え、会場の明治学院が学園祭であったこともあり、開催中の「反米の世界史:切手が語るアメリカ拡大の歴史」展 (10:00~16:30 3・5・6の各日には13:30から展示解説あり。入場無料)にも大勢のお客様をお迎えすることができました。この場を借りて、お礼申し上げます。


 さて、今回の反米展では“鬼畜米英”を叫んでいた時期の日本関連のマテリアルもいくつか展示していますが、その中には、こんなものも含まれています。


 満州不発行1   満州不発行2


 終戦直前、満州国は寄付金つき切手を発行して戦闘機を購入することを計画。このため、額面3分に対して47分、6分に対して44分というべらぼうな寄付金(300円の切手に4700円の寄付金をつけるようなものです)をつけた上のような切手を準備しています。


 このうち、赤い6分の切手には“撃滅宿敵”の記述も見られますが、ここでいう宿敵が“鬼畜米英”を指していたことはいうまでもありません。


 しかし、1945年8月9日、日本と満州国にとっては寝耳に水でソ連軍が攻め込んできたため、満州国はあっけなく崩壊。それに伴い、この切手も発行されないままに終わりました。


 もっとも、仮にこの切手が発行されて、寄付金を集めて戦闘機を買えたとしても、その台数はたったの3台。これじゃぁ、どっちにしても“焼け石に水”という感じがしないでもありません。


 さて、10日まで東京・白金の明治学院大学 キャンパス内のインブリー館にて開催中の「反米の世界史:切手が語るアメリカ拡大の歴史」展(10:00~16:30 3・5・6の各日には13:30から展示解説あり。入場無料 詳細はトップのポスター画像をクリックしてください)では、この切手をはじめ、今年6月に上梓した拙著『反米の世界史 』で使った図版の実物を中心に展示しています。週末ももちろんやっていますので、みなさん、遊びに来ていただけると幸いです。


 ◆東京・目白の<切手の博物館 >では、6日(日)まで「皇室切手展」を開催中です。会場では、戦前の皇室のご婚儀に関連する切手の名品を多数、展示しているほか、11月5日の17:15からは『皇室切手 』刊行記念のトークを行いますこちらにも、是非、お運びください。