リビアの反米切手 | 郵便学者・内藤陽介のブログ

 リビアの反米切手

 昨日からはじまった「反米の世界史:切手が語るアメリカ拡大の歴史」展 (10日まで東京・白金の明治学院大学 キャンパス内のインブリー館にて、10:00~16:30 3・5・6の各日には13:30から展示解説あり)は、今年6月に上梓した拙著『反米の世界史 』でつかった図版の実物を中心に展示を構成していますが、本では取り上げられなかったテーマや切手も一部、追加的に展示しています。


 その一例が、たとえば、こんな切手です。


 リビアの小型シート


 これは、1988年、リビアがアメリカによるトリポリ空爆2周年を期して発行した小型シートです。


 1969年にリビアを掌握したカダフィ大佐は、反米・反西側の姿勢を鮮明に掲げて、欧米諸国に対抗するテロ組織を支援してきました。そうしたなかで、1986年、西ベルリン(当時)で、米軍関係者が多数出入りしているディスコでの爆破事件が起きると、リビア政府が事件の黒幕であると断定したアメリカは、報復として、カダフィの暗殺を目的に、首都トリポリへの大規模な空爆を行いました。空爆の結果、トリポリ市内は破壊され、多数の民間人が犠牲になりましたが、カダフィ本人は逃げ延びます。これに対して、1988年、リビアは空爆への報復として米パンナム航空機爆破事件を起こし、270人もの死者を出しています。

 

 切手は空爆から2年が過ぎ、パンナム機事件が発生した1988年に発行されたもので、瓦礫の山となったトリポリ市内のようす(上段左)や空爆の瞬間(上段右)、負傷した少女を見舞うカダフィ(中段右)等が取上げられているほか、シートの余白には“AMERICAN AGRESSION”の文字もはっきりと読み取れます。

 

 もっとも、僕なんかの目からすると、切手のデザインには、なんとなく出来損ないのアメコミの雰囲気が濃厚に漂っているような気がしてしまうのですが…。

 

 さて、この切手の実物は、10日(来週木曜日)まで開催中の「反米の世界史:切手が語るアメリカ拡大の歴史」展 の会場でごらんいただくことができます。この他にも、会場では拙著『反米の世界史 』でつかった図版の実物を多数展示していますので、是非、遊びに来ていただけると幸いです。

 

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