キューバから手を引け! | 郵便学者・内藤陽介のブログ

 キューバから手を引け!

 10月22日は、1962年にアメリカのケネディ大統領がキューバを海上封鎖し、いわゆるキューバ危機が本格的に始まった日です。というわけで、今日はこんなモノを引っ張り出してきました。


 キューバから手を引け!


 これは、1962年10月に東ドイツのマグデブルグ(中学校の理科の教科書に出てきた真空実験の半球で有名な町です)から差し出された郵便物の一部で、「キューバから手を引け!」とのスローガンが入っています。


 6月10日の記事 でも書きましたが、もともと、カストロの革命は、あまりにも極端な社会的不平等を是正するためのもので、必ずしも社会主義的なものではありませんでした。しかし、農地改革などの政策が、キューバに莫大な利権を持っていたアメリカの逆鱗に触れたことで、アメリカによるカストロ暗殺未遂事件など革命つぶしの工作が本格化。これに対抗するために、カストロはソ連に接近していくことになります。


 その一環として、1962年、カストロは、兵器提供の代りに核ミサイルをキューバ国内に配備するというソ連の提案(アナディル作戦)を受けいれ、これに従ってソ連製の核ミサイルがキューバに配備されていきます。


 これに対して、アメリカは偵察飛行により、同年10月14日、キューバにアメリカ本土を射程圏内とするソ連製ミサイル(MRBM)が配備されていることを発見。ケネディはエクスコム(国家安全保障会議執行委員会)を設置し、海上封鎖でソ連線のキューバ入港を阻止。10月22日には、テレビ演説で国民にキューバにミサイルが持ち込まれた事実を発表し、ソ連を非難しました。


 結局、キューバ危機は、米ソ両国の間で妥協が成立し、アメリカがトルコのミサイルを撤去する代わりにソ連もキューバのミサイルを撤去することで決着。世界は核戦争の脅威から救われました。


 キューバ危機は、世界史的に見ても非常に重要な出来事なのですが、実質的な期間が13日間(そういえば、そういうタイトルの映画もありましたね)しかなかったことに加え、直接的な戦闘が行われたわけではないので、当時の切手や郵便物にその痕跡を探すのは決して容易なことではありません。


 そういうわけで、今回の消印は、キューバ危機が表面化する直前の時期のものではありますが、この時期のキューバ関連のプロパガンダ・マテリアルとして非常に分かりやすいものなので、個人的に気に入っています。まぁ、欲を言えば、キューバ危機に伴う海上封鎖によって配達不能となり、差出人戻しとなったキューバ宛の郵便物なんかを手に入れられたら、文句なしなのですが…。


 さて、11月1~10日(10:00~16:30)、東京・白金の明治学院大学 キャンパス内のインブリー館を会場に、「反米の世界史:切手が語るアメリカ拡大の歴史」展を開催します。この展覧会は、その名の通り、拙著『反米の世界史 』でつかった図版の実物を中心に展示するもので、キューバに関しては、本日ご紹介の封筒も展示する予定です。入場は無料ですから、是非、遊びに来ていただけると幸いです。