銀の鳳凰 | 郵便学者・内藤陽介のブログ

 銀の鳳凰

 いよいよ、明日(28日)から全国切手展<JAPEX >がスタートします。


 すでに、いくつかのブログでも話題になっているようですが、今年から、通常の基金(1口4000円)に加え、一口3万円の特別基金を設け、特別基金のご協力者の方々にはいくつかの特典の一つとして、一般入場(10:30より)に先立ち、10:00よりご入場いただけるようにいたしました。

 

 切手の面白さ・奥深さを一人でも多くの方に知っていただくためは、僕が毎日このブログに記事を書いているだけではダメで、やはり、しかるべき場を用意してきちんとした内容のソフトを社会に向けて発信することが必要です。日本最大の切手イベント<JAPEX>は、まさに、そのための絶好の機会なのですが、こうしたイベントをやるには巨額の資金が必要です。そこで、いろいろな方に“基金”というかたちでご寄付をお願いしているわけです。(もちろん、ブースをご出店いただいている切手商の方々にも、足を向けて眠れません)


 今年、実行委員長という立場で<JAPEX>に関わってみて、とにかく、多くの方から頂戴した浄財をいかに有効に活用するか、という点を自分なりに一生懸命考えてきたつもりです。そのためには、実行委員・審査委員の謝礼を減額したのをはじめ、とにかく、不十分かもしれませんが、経費面で圧縮できるところは圧縮してみようと努力したつもりです。


 その反面、資金面でご協力いただいた方、特に、大口のご協力者の方に、いかに喜んでいただけるサービスを提供できるだろうかと頭を悩ましました。特別基金ご協力者の入場を(30分だけの内覧会ですが)早めたのも、いかに経費をかけずにご協力いただいた方に報いることができるか、僕たちなりに一生懸命考えた結果の一つです。


 ただし、今回は実験的な試みなので、10:00~10:30の時間帯は展示スペースのみの内覧会で、切手商ブースのスペースへは従来どおり10:30からのご入場となります。一般公開に先駆けて、展示をごゆっくりとご覧いただければ幸いです。(この点、僕の説明不足で一部に誤解を招いたようで、申し訳ありませんでした)


 さて、今年の<JAPEX>では、目白会場(切手の博物館)での“皇室切手展”、池袋会場(サンシャイン文化会館)での“1945年”と“国連切手展”の3つを柱にイベントを組み立てましたが(もちろん、全国から寄せられた競争出品と切手商ブースも例年通り、たっぷり楽しめるものとなっています)、全体のシンボルとしては、↓の切手を前面に押し出しました。


  大正銀婚


 この切手は、1925年に行われた大正天皇の銀婚式を記念して発行されたもので、銀色のマージンにグリーンの鳳凰がすごく格好いいと思います。


 当時、大正天皇は病床にあり、銀婚式そのものが無事に行えるかどうか危ぶまれていましたが、最終的に銀婚式が行われることになり、記念切手も突貫作業で作られました。実際の切手は平版印刷ですが、原版は、原画を凹版で彫刻した後、それを平版で印刷するというスタイルをとっています。また、周囲の目打ちの銀色部分は、すべて手作業(!)でアルミ箔を貼り付けたもので、さすが、大日本帝国の天皇の銀婚式を祝うだけに、気合いの入った作りになっています。


 今回の<JAPEX>の凹版カードを作るとき、さすがに“1945年”の切手ではしまらないので、目白会場の“皇室”にちなんだものから題材を選ぼうと言うことになりました。そのなかで、候補としては、1959年の皇太子(今上陛下)ご成婚ということも考えないではなかったのですが、やはり、単純に格好いい切手ということで、大正銀婚の鳳凰に軍配が上がりました。


 で、せっかくならということで、この切手は凹版カードのみならず、Pスタンプや小型印のデザインにも使って、全体のシンボルマークのような扱いにしています。いずれも、近年の<JAPEX>のグッズの中では一番できがいいと思いますので、展示をご覧いただいた後、お時間があれば記念グッズのコーナーにもお立ち寄りいただけると幸いです。


 なお、<JAPEX>の基金に一口以上ご協力いただいた方には、もれなく、精巧な凹版印刷による、この切手の墨一色の模刻(↓ 画像は部分)を贈呈します。ホンモノと見比べてみて、その確かな技術を味わっていただければ幸いです。


 凹版カード

 

 *大正天皇の銀婚式と切手に関しては、新刊の拙著皇室切手 』をご一読いただけると幸いです。(皇室切手 (18) をクリックしていただくと、関連の内容をお読みいただけます)

 また、上述の通り、10月28日~11月6日、東京・目白の<切手の博物館 >では、出版元である平凡社の後援で「皇室切手展」を開催します。会期中は、戦前の皇室のご婚儀に関連する切手の名品を多数、展示いたします。会期中の僕の予定としては、10月29日の午後(3:30頃から)には展示解説を、11月5日の17:15からは『皇室切手 』刊行記念のトークを行う予定です。一人でも多くの方に、是非、遊びに来ていただけると幸いです。